2014/01/20

「サダカ」という慣習 / Custom called "Sadaqah"

イスラム圏であるモロッコでは、「サダカ」という自由喜捨を意味する言葉を時々耳にします。(イスラム教の五行の一つである「喜捨」(ザカート)という言葉もありますが、これは制度喜捨を意味し、「サダカ」は自由喜捨、つまり任意で慈善行為をするということを意味するようです。もともとは窮困者を助けるための行為のようです。)

任地グルミマに赴任してから間もない時に、いきなり道の脇で数人の人たちが集まって、巨大なお皿に乗ったクスクスを食べていたのを見たことがあります。一緒にいたモロッコ人に「あれは何?」と聞いたら、「あれはサダカだよ」と言われました。

そうしたら、「君も食べて行く?」とそのモロッコ人に言われたので、「え?でも私、この人全然知らないんだけど・・・」と言ったら、「そんなの関係ないよ。来なさい」と言われて、クスクスを提供していた女性は全く知らない人でしたが、頂くことにしました。道行く人も、面識がなくても寄って来て、クスクスを提供してくれた女性からスプーンを受け取って、数口食べたら去って行きました。
大さじスプーンがティースプーンに見える程大きな木のお皿に、
たくさんのクスクスがのっている

知っている人に食べ物を差し出すならまだしも、全く見知らぬ通りすがりの人までにも食事を作って、それを道端で提供する・・・って、日本人にとってはなかなか見慣れない光景です。同じモロッコでも、都会だと食事を道端で提供する姿は見たことない、という隊員もいるのですが、田舎のグルミマではよく道端でクスクスをサダカとして提供している姿を見かけます。

ある日活動先でファティマという女性がお休みだったので、「ファティマは今日どこ?」と聞いたら、他の女性が「今日は彼女はサダカをしているから忙しくって来れない」と言っていたことがありました。

そして2週間程前には、活動先の同僚の女性に「うちで明日の夜にサダカをするからいらっしゃい」と言われたので、行ってみました。なんと集まったのは女性約50人、男性もおそらく同じくらいの人数!(基本、モロッコ人の家庭でたくさんの客を招いて食事をする時(結婚式やサダカの時)は、男女が別々の部屋で食事をするので、正確な男性の数は不明。)

結婚式もサダカの時も、集落の女性が集まる時は、ベルベル刺繍のタハルートのオンパレード!待っている間にどんどん色んな女性が部屋に集まって来て、入ってくる女性が巻いているタハルートも人それぞれ。カラフルなタハルートを見比べては、「あれは可愛い・・・」とかじっくり見てしまう・・・。

そこまで広くない部屋に恰幅のいい中年女性ばっかりが50人以上集まって、部屋は時ぎゅうぎゅう詰め・・・。ベルベル人女性約50人にぎゅうぎゅうに囲まれ、私日本人がその中に1人いる姿は、なんだか考えてみるとすごく不思議な光景な気がする・・・。そのうち、イスラム教の教えだかコーランだかの議論が始まったけど、何をしゃべっているか分からないから集中力は切れて、眠気に教われる・・・。

その議論は結局2時間程(!)続き、やっと食事の登場!多分食事が出たのは夜10時過ぎ。メニューは結婚式の時と同様、鶏肉のクスクスと牛肉のタジン、そしてフルーツ。8人ずつくらいに分かれて、ちゃぶ台のようなテーブルを囲んで食べます。食事が終わったら、あっけない程あっという間に皆素早く解散。


また、別の日は違う集落のサダカに招待されたので行ってみました。こちらは夕食でなくて、昼食でした。サダカの会場が分からなかったので、活動先のリーダー的な存在の女性の家に立ち寄ってから一緒に行くことにしました。この家には可愛い猫ちゃんが住み着いていて、いつも行く度に猫ちゃんと遊んで行きます。


この女性の家で結局1時間くらい待って、行った先はなんとその集落にあるモスク。モスクといっても中じゃなくて、外のテラスのようなところでサダカは行われてました。私たちが行った時は既に女性たちや子どもたちが何十人か集まっていて、順番に巨大なお皿のクスクスが運ばれてきました。

ここでは、12〜13人が一つのお皿を囲んで一緒に食べる感じでした。こんなに大きなお皿のクスクスも、一気にみんなが食べると、この通り、あっという間になくなります!

ちなみに、サダカで食事を頂くのはもちろんタダです。でも、サダカを提供する方は、百人以上の人たちの食事を負担するので、お金は相当かかると思います。それでも、サダカをしようと思う喜捨の心って、なんだか凄いな・・・と思いました。

ちなみに、このように食事を大人数に提供するというサダカの行為もあれば、他の行為もあるようです。

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